2009年10月17日

ダジャレではなく「ちょっとしたしゃれ」

<例文>

(インタビュアー)  
今日は研究所に来ています。さっそくお話を聞いてみましょう。開発に成功したという新しい体重計ですが、従来の体重計との違いはなんですか?

(白衣を着た白髪の男) 
手と足で測る全身測定式を採用されています。

(インタビュアー)  
ほかに特徴的なことはなんですか?

(白衣を着た白髪の男)
見た目ではわからない内臓脂肪まで測れる機能が付けられています。
        
(インタビュアー)   
すばらしいですね。では、開発するのに一番苦労したことはなんですか?

(白衣を着た白髪の男) 
さぁ……どうなんでしょう。あ、博士! どこに居られたんですか。いま取材の方がいらっしゃってますよ。


――見た目ではわらない、かくれ肥満も見逃さない。
   http://taishiboutaij.jugem.jp/



<解説>

研究所に白衣を着た白髪の男がいます。彼は誰でしょう?


おそらく、博士や主任研究員だと思うことでしょう。


人は見た目で物事や人物を判断しやすい傾向があります。


そういう傾向を利用して、ユーモアを添えて商品の特徴を伝えて購買意欲を掻き立てようとするのが今回の例文です。


商品広告コピーで使われる手法にはさまざまなものがありますが「○○と○○が係っている」というのが人気です。


とはいっても、ダジャレではいけません。あえてダジャレを連発するというのもひとつの方法ですが、ひとクッション挟むぐらいがちょうどいい。


ダジャレではなく「しゃれ」。ちょっとしゃれているじゃないか、というぐらいがちょうどいいのです。


ダジャレは「くだらない」「ふざけている」「めんどくさい」という負の印象を与えがちです。


しかし、ちょっとしたしゃれは「気が利いている」「ユーモアがある」という正の印象を与えることもできます。


ちょっとしたしゃれは「○○と○○が係っている」ことがわかりやすいのだけれども、そのものズバリではない。ひとクッション挟むぐらいがちょうどいい。


例文では、見た目ではわかりにくい体脂肪を測定できる体重計と、見た目では違いがわかりにくい助手と博士をかけています(わざわざ説明するのはある意味サムいのですが……)。


商品と状況をかける。さらにその状況が商品の特徴を伝える。


こうした、しゃれた広告コピーには「ことば」のテクニックも使っています。


それは、白衣を着た白髪の男が誰であるかを読み手に知らせるヒントを与えている部分にみてとれます。


具体的には「手と足で測る全身測定式を採用されています。」と「見た目ではわからない内臓脂肪まで測れる機能が付けられています。」に、受身とも尊敬ともとれる「あいまいさ」を残しているところにみてとれます。


これにより、白衣を着た白髪の男が開発したのではないことを匂わせているのです。


こうした広告コピーは、文の「あいまいさ」を意識できているからこそ書けます。


また、読者も文の「あいまいさ」になんとなくでも気づいているからこそ、広告コピーを楽しむことができます。


今回の例文の「しゃれ」がわかりにくかったという人もいるでしょう。


でも、広告文の場合は「新商品を買ってください」とストレートに書き連ねても、効果はあまり期待できません。


「なんだろう?」と興味をもってもらい、ちょっとした「しゃれ」で楽しませて商品へつなげる工夫が必要です。


そのためにはダジャレでは効果は薄い。ちょっと考えると「しゃれ」がわかるぐらいの、ひとクッションあるぐらいがいい。


今回は「あいまいさ」を意識すれば、わかりすい文を書けるだけでなく、様々な種類の文を書く際に応用することができる、という話をお届けしました。


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2009年10月08日

山崎邦正はホンモノ!? ブラマヨは百も承知!?


山崎邦正はホンモノ!? ブラマヨは百も承知!?
〜「お笑い芸人」に学ぶ、わかりやすくする方法〜


山崎邦正というお笑い芸人がいます。


「ヘタレ」や「ヨゴレ」の芸風で、近年はスベリ芸を持ち味とします。


ギャグがウケずに空回りするかのような滑稽さを楽しんでもらう芸を得意とします。ですから「山崎邦正はおもしろい」と言ったら営業妨害になるとか。


そんな芸風の彼は1988年のデビュー(コンビを組んでデビュー)から今日までテレビを中心として芸能活動を続けています。


さて、人気があるかどうかの指針としてファンの数があります。ファンの数が多ければ人気がある。


では、テレビに出演し続けている山崎邦正のファンはどれくらいいるでしょうか。


ファンクラブがあるのかどうかはわかりませんが、自分は山崎邦正のファンだと声高らかに言う人はおそらく少数でしょう。


そうすると、ファンの数が少なそうな山崎邦正は人気があるのでしょうか。


おそらく、一般的には「人気がない」ということになるとおもいます。


では、人気がない芸人がテレビに出つづけることができるのはなぜか?

お笑い芸人の島田紳助はテレビのバラエティ番組で、売れる芸能人はどんな人かについて次のように言います。


「人気がなくなってからもテレビに出つづける人」


人気者になるのはすごく大変です。でも、人気がなくなってからもテレビに出続けることができるのは、タレントとして「本物」になった証だというのです。


デビュー当初はかわいらしい外見のためアイドル芸人といった売り方をされて人気があった山崎邦正。


年を重ねてアイドル的人気がなくなった後は、ヘタレキャラが目立ちはじめます。やがてスベリ芸を開拓して今日までテレビに出続けています。


誤解しないでいただきたいのですが、山崎邦正は人気がなくなったあとに手に入れたのがたまたまヘタレキャラとスベリ芸だったのであって、けっして「つまらない芸人・売れないタレント」というわけではありません。


だからといって先にも言及したとおり「おもしろい芸人」だと言ったら営業妨害になるのですが……。


テレビに出続けること。売れ続けること。


それができるのはタレントとしての魅力と需要があればこそ。


これを一般人に当てはめて考えてみましょう。タレントの人気を、ある特定の集団のおける注目度に置き換えます。


たとえば学校で注目を集める人といえば誰でしょう。


3組の、サッカー部の主将の出来杉くん?


いえいえ、全校生徒の注目を一番集めることができるのは校長先生です。


会社だったら社長です。


肩書きといった「枠組」があれば、その枠内の構成員たちはたとえ校長先生や社長の話や文章がわかりにくくても、その真意を知ろうと推測してくれます。


そこそこ物事が順調で人気や肩書きがあれば、だれだってある程度はチヤホヤされます。


大事なのは人気や肩書きが無くなったときです。


人気や肩書きなくなっても、魅力があれば人が寄ってきます。人がやってくるということは、魅入られるだけの需要があるということです。


山崎邦正は人気があるでしょうか。人気者とはなかなか言えない。ファンだって限りなくゼロに近いかもしれません。


でもヘタレキャラやスベリ芸によって山崎邦正という芸人に魅力が生じ、芸を披露する場がある。つまり芸人として需要がある。


人気はなくとも、魅力と需要があるからテレビに出続けることができる。


テレビに出続けることができるからタレントとして「本物」だといわれる。


では、一般人は「肩書き=人気」を失っても、人生という舞台に立ち続けることができるでしょうか。


これはたいへん難しいといわざるを得ないでしょう。


多くの人々は肩書きにしがみついて生きています。


肩書きはある種の集団や共同体に存在するもので、人はなにかしらの共同体に自身の存在意義を見い出さなければ「生きる意味」を実感するこがたいへん難しいと感じます。


ですから肩書きを一度手に入れると、それを手放すことはたいへん難しく、何があってもかたくなに守ろうとします。


「国会議員、バッジを外せば(落選すれば)ただの人」ともいいます。


国会議員なら、少なくとも数年に一度は選挙を戦わなくてはならないことを承知しています。


でも、学校の先生になったらほとんどの人は何十年も先生のままです。


係長になったら、次は課長。運と要領が良くてコネがあれば部長ぐらいにはなれるかもしれません。


公務員になったらめったなことがないかぎり定年まで公務員のままです。


ずっと肩書きにしがみついて生きていきます。


そういった肩書きを含めて、それが「人生」だといえばそのとおりですが、肩書きを失っても「人生」には変わりありません。


肩書きを失った途端、自分は引退したんだと宣言する人もいます。でも人生を引退するのは人間をやめたときです。


人としてやってならないこをしたときに「あいつは人の道を外れた」とか「あいつは人間じゃねぇ」とかいうこともあるかもしれませんが、一般的には人生を引退するのは死んだときですから、人は生きているかぎりは現役なのです。


「人気(肩書き)」がなくなったからといって芸能人が簡単に芸能活動をやめるでしょうか。


お笑い芸人が過去にお笑い演芸大会で新人賞を獲ったとか、漫才大会で優勝したとかいうことがあっても、いまおもしろくなければ、いま魅力がなければ、いま需要がなければテレビに出ることはできません。


M-1グランプリ歴代優勝者のなかでもブラックマヨネーズというお笑い芸人コンビの吉田は、自分がM-1グランプリの王者であることを、ことさら強調します。


すると相方の小杉が「いつまでM-1王者にこだわってん!」とツッコみ、笑いをとります。


実際、ブラックマヨネーズはM-1グランプリ優勝で一気に全国に知られるようなってブレイクしましたが、コンビとしておもしろいからテレビに出続けることができています。


M-1グランプリ優勝はたいへん大きなことですが、それはあくまで「売れるきっかけ」であって「売れ続ける要因」ではありません。


芸能人は、人気がなくなってからが本番です。人気がなくなってからタレントとしての真価が問われるのです。


一般人も「肩書き(人気)」がなくなってからが本番ともいえます。


ほら、よくサバイバルを題材とする映画作品で、外界と遮断された閉ざされた場所に登場人物たちが集まるというのがあるでしょう。


登場人物たちはメジャーリーガーや医者や弁護士や中古車のセールスマンやラッパーやダンサーやシングルマザーやウェイトレスだったりしますが、肩書きがたいして意味をもたない状況に陥ったときに、それぞれのキャラクターの真価が浮き彫りになって、生き残るのは中古車のセールスマンとシングルマザーだけでした、というような作品はありがちです。


ありがちというのは、それだけ需要があるということです。


では、こういう作品のなにが観客に受け入れられるのでしょうか。サバイバルアクションでしょうか。


サバイバルアクションよりも、普段は覆い隠されている肩書きを取り払ったときの人間のエゴや良心や意志や行動力を疑似体験させてくれるおもしろさを観客は求めているのです。


さて、現役であり続ける人生という舞台には他の出演や観客も必要です。舞台が魅力的なら、肩書きがなくても出演者も観客もきっと集まってくるでしょう。


ですから、人気があるときや肩書きがあるときに、その上にあぐらをかいてはいけません。


テレビに出続ける芸能人は、人気があるときから人気がなくなったときのことを考え、自身のキャラと芸を磨き続けています。


私たちは、多かれ少なかれ肩書きを持っています。


部長、課長、係長、主任。教頭先生、学年主任、担任の先生。理事会会長役員、理事会役員。生徒会長、学級委員。お父さん、お母さん、兄、姉。


それぞれの肩書を外しても、みんなは私の話を聞いてくれるだろうか? 私の話はみんなにちゃんと伝わっているだろうか?


そんなことを少しでも自問してみれば、だれでも自分の人生という舞台にしっかりと立ち続けることができるのです。


先ほど、大事なのは人気や肩書きが無くなったときです、と書きました。


もう少しいうならば、大事なのは人気や肩書きという枠を取り外しできること、です。


どんな人も少なくともひとつやふたつの肩書きを持っています。一般的には、肩書きはないよりはあったほうがいい。肩書きがあるからこそ人は「生きる意味」の答えを得ることができて、幸せを感じることができます。


ブラックマヨネーズだってM-1グランプリで優勝するまでは、関東では無名に等しかった。M-1王者という肩書きを得たおかげで、全国区で活躍できるお笑い芸人になりました。


でも、M-1グランプリの王者は毎年誕生します。M-1王者という肩書きはあったほうがいいけれども、それは売れるきっかけであって売れつづける要因ではありません。


そんなことはブラックマヨネーズは百も承知です。だから吉田は自分たちがM-1王者であることを強調し、相方の小杉が「いつまでM-1王者にこだわってん!」とツッコむことで、肩書きを外してみせるのです。


このブラックマヨネーズのお約束のやりとりは、肩書きを自分たちで自由に取り扱えるからこそできるものなのです。


大事なのは、肩書きを自分で取り外せるかどうかです。


自分で「枠」を脱着できるか? 


これが大事なのです。


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