2010年04月29日

懲りすぎない


<例文>

温泉施設の案内ページやチラシにて。

「10種類のお湯たちがお客様をお出迎え致します」


<解説>

擬人法とよばれるものですが、少々やりすぎかなとおもいます。

お湯は液体ですから、ひとつの形に定まっておらず、絶えず流動しているイメージがあります。

個別に識別しにくいお湯を、あたかも人間かのように表現するのはちょっと無理があるかなぁともおもいます。

さらに、お湯たちがお出迎えする、というではありませんか。

温泉施設の入り口にお湯たちが一列に並んで「いらっしゃいませ!」と笑顔でご挨拶。

う〜む。いまいちお湯たちの顔が思い浮かびません。

お湯がまるで人間のような形を成して、ズラッと並んでお客さんをお出迎えすることは、実際にはありえないわけです。

ありえない表現をするのもテクニックであり効果が期待できますが、やりすぎは逆効果です。

凝りはじめると、人はどんどん凝りはじめます。だんだん楽しくなるんですね。

でもそういう場合に楽しいのは、たいていは本人だけです。

楽しくなってきたな、と思ったら一旦やめてみるのも手です。

では、凝ったところを削ぎ落としてみましょう。


<リライト例>

「10種類のお湯でおくつろぎいただけます」


素っ気ないように思えるかもしれませんが、懲りすぎよりはいいでしょう。

お湯が10種類あることを伝えることが、ここでは何より大事ですから。

2010年01月09日

魔法はダメよ

<例文>

「卒業までは、みんな月面宙返りができるようになる」



<解説>

例文のいいたいことは何でしょうか。

おそらく、卒業する頃にはみんな月面宙返りができるようになる、といいたいのでしょう。

ところが例文は「卒業までの期間、つまり入学から卒業までの期間限定でみんな月面宙返りができるようになる」とも解釈できます。

書き手のいいたい事と文の形がズレているために、なんだかおかしくなっているのです。

例文を簡潔にすると「卒業までの期間限定で●●ができるようになる」となります。

多くの場合、人は一度習得した技術をその後もずっと持ちつづけることができます。

もしも「期間限定で●●ができる」なら「条件をクリアすれば可能」や「許可」を連想できるのでOKです。

しかし「期間限定で●●ができるようになる」という文は、魔法で一時的に「あること」が可能になるという特殊なケースを連想させるのでNGです。

図で示してみましょう。


(図1)
――――――――――B―――――→

Bまでの期間は可能。



(図2)
――――――――――B―――――→

Bまでの期間が経過すれば可能。



例文がいいたいことが図2ならば、次のように表記するとよいでしょう。



<リライト例>

「卒業までには、みんな月面宙返りができるようになる」


「に」を一文字入れただけ明確になりましたね。

そもそも、いいたいことはわかるんだけどなんだかしっくりこない文が巷にあふれています。

そんな文ばかりだといってもいいでしょう。

なんだかしっくりこない文をひとつみつけたら、ほかにも10ぐらいは同じような文があると思っていいでしょう。

たったひとつの「なんだかしっくりこない文」であっても、読み手に負担をかけます。

たとえ小さな負担でも、数が増えればボディブローのように読み手にダメージを蓄積させます。

だからこそ、なんだかしっくりこない文をスマートにできたらどうですか?

それも、たった一文字で。

もしもそんなことができたら、その文章は洗練されます。

洗練されたスマートな文章は、たった一文字からできるのです。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。