2010年12月07日

伝えないがために伝わってしまうこと



〜プロを意識とは〜プロの仕事とは〜「器」の活かし方〜


伝えるとは? について、今回はビジネスへの応用例についてお話しましょう。


とつぜんですが、アナタが合コンに出席したとします。


自己紹介をどうしますか?


自分のニックネームを決めておき、趣味やマイブームや大好きなことを話して「彼女(彼氏)募集中でぇ〜す☆」と明るく言って締めよう。これはよくあるかんじですね。


ところがお笑い芸人コンビ「アンタッチャブル」の山崎弘也さんはこんなふうにいいます。


『自己紹介は相手がいかに気持ちよくできるかを考えて盛り立てる。』


自己紹介と聞いて自分のことばかり考えるのではなく、常に相手を楽しませようとするんですね。


想像してみてください。自分が自己紹介を始めたけれどもだれも聞いていなかったり、聞いているんだろうけどシーンとしていたりしたら……。


邪魔にならない程度に合いの手を入れるかのように反応してくれたら、きっと気持ちよく自己紹介できるでしょう。


そして大事なのは、相手がいかに気持ちよくできるかを考えて盛り立てようとすればするほど、アナタのその振る舞い自体が自己紹介にもなる、ということです。


もうひとつ想像してみてください。合コンで、このヒトつまらないなぁと思うのはどんな人ですか?


典型は自分のことしかしゃべらない人ですね。すべての話の冒頭に「俺(私)ってさ」を付けられるような話し方をするような、そんな人。


これらをビジネスに置き換えて考えてみましょう。


アナタが旅行会社に勤めて(または経営して)いるとします。自社のお店にきてくれたりメルマガ会員登録してくれたりしたお客さんに向けてどんなことを伝えればいいでしょうか。


誰でもパッと思いつくのは自社の旅行企画の紹介でしょう。定番企画、旬の企画、新企画と次々に伝えようとします。こんなケースはありがちですね。


そんななか、競合他社の企画についてもサラリと触れていたらどうでしょう。それは明らかに自社の企画と競合するものです。内容がまったく同じというわけではないけれども、お客をとられかねないような企画です。


そんなことはしないでおこうと思いますか?


明確な企画意図と特徴があれば、なにもおそれることはありません。


むしろあえて話の流れで競合他社の競合企画についても触れておくぐらいの気持ちが必要です。もちろん、実際に触れてもいい。


もしもわざわざ競合他社の宣伝をしてやることはないと思うなら、そもそも「サービスとは何か」を考えてみる必要があります。


自社にやってきてくれたり関心を持ってくれたりするお客さんは、何を求めているのでしょうか。それは旅行です。旅に関する話題や情報を求めているのです。


お客さんは必ずしも特定の旅行会社の特定の企画だけを求めているわけではありません。どこかにいい旅行体験ができるものはないかなぁ、と(いい意味で)カル〜く考えています。


自社のDMやメルマガ会員の登録をしてくれたからといって、自社のことだけが求められているわけではありません。お客さんはあくまで旅行体験を求めているのです。


いいな☆と思える旅行を求めているのであって、特定の旅行会社を求めているのではないのです。もちろん、いいなと思える旅行を求め続けた結果、いつも特定の旅行会社に行き着くということはあります。


だからこそ、その特定の会社のDMやマルマガを受け取ることを許してくれているのです。


お客さんが求めているものがわかったなら、自社・他社という概念は一旦捨ててしまいましょう。その概念は会社側のものであって、お客さん側のものではないからです。


旅行というキーワードに照らし合わせて広く見渡してみる。そもそも旅行業界のことは、その世界にいる人がいちばんよくわかっているわけですから、お客さんが求めるものに合わせて情報を選択し、組み合わせ、作り直して提供すればお客さんに喜ばれるのです。


つまり提供できるサービスとは、お客さんの要望を叶えることなのです。


そしてお客さんの要望を叶えつつ、できるだけ自社の企画を選んでもらいたいならば、すべきは判断材料を提供することです。


たとえ他社の競合企画を伝えずに、ちょっと意図して隠していたとしても、たいていのお客さんは複数の旅行会社の旅行パンフレットや旅行サイトなどで情報を集めて比較検討します。


ならばこちらからその材料を提供するのです。そうすればお客さんは「客のことを第一に考えているようだ」「競合他社の商品を紹介できるほどに自社の企画に自信があるのだろう。どれどれ、それほどの企画とは?」と思うことでしょう。これが次につながる仕事というものです。


比較しないでスグに買ったら、思っていたのと違う箇所があると落胆します。ところが比較検討して買うと、どんな結果もほぼ想定内と思える(思おうとする)もの。


比較検討する助けができたなら、それは立派なサービスです。


自社だけ。他は締め出して一切とりあげない。


そんなことをしたら、もしも情報サービスを売るビジネスモデルならばなおさら、ますますお客さんは離れていくでしょう。


合コンで自分の話しかしないヒトと「次回」の約束をするでしょうか。


合コンの例で、自分のことしかしゃべらない人をツマラナイと感じるのと同じように、自社のことしか伝えないならば、魅力が無い会社といわれてもいたしかたありません。


たとえ競合他社の話題であっても、それを絡めて伝えれば業界が盛り上がり、やがては自社の利にもつながる。


業界内の話題を伝える。それが競合他社の競合商品であろうと、それぞれの違いを際立たせることで客に選択してもらえるのです。



さて競合他社の企画も紹介しようと決心したとして、その方法も大事です。


基本として、ネガティブキャンペーンは控えましょう。


相手を陥れるかのような紹介の仕方はよほどのユーモアがないかぎり、自社のイメージダウンとなります。


では、ちょっとだけ紹介すればいいのでしょうか。


いえ、紹介するなら全力でするのです。


自社の企画に取り組むのとおなじぐらいの気合を入れて行いましょう。


以前にご紹介したニュース記事のタイトル例をもう一度みてみましょう。



●タイトル例1
【執事がお供 秘密のパーティーへ 近ツーが企画】

これではちょっと手抜き気味ですからリライトしてみましょう。


 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓


●タイトル例2(リライト例)
【執事がお供 貸切列車で行くお嬢様のための小旅行】


伝えるべき「核」となるキーワードの重要度が高い「執事」を冒頭に置き、「貸切列車」で鉄道と豪華さを、「お嬢様」でターゲットをズバリ伝えています。


そして、いったいどこへ行くのか? と疑問をもってもらいやすくしています(ミステリー感を醸し出す)。



競合他社の企画だろうと全力で取り組む。その姿勢に読者はプロを意識します。


プロが薦める企画ならば……と耳を傾けてみたくなりますよね。


どうしても同じぐらいの規模の競合他社の企画を紹介するのはちょっとためらわれるというのであれば、自社よりも明らかに規模が小さい他社の企画を丁寧にとりあげてみましょう。


ていねいに発掘していると感じてもらえたなら、お客さんの評価も上がります。


また、比較的小さいその競合他社はありがたく思い、ずっと心に残りつづけることでしょう。


これがもしも温泉地の宿同士なら……。丁寧な発掘作業を続けていれば、いつしかその温泉地が廃れかかったときにも大きな力となります。


自分の宿のお風呂を広く提供することでそれぞれの宿の魅力を知ってもらうきっかけを提供する「温泉手形」のような企画を立てたときに、それに賛同してくれる宿がきっとあることでしょう。


自分の宿だけ、という考えのままでは温泉地が廃る。お互いの魅力を引き出し合い、伝え合うこと。それが客へのサービスとなり、自分を救うことにもなるのです。


自分だけ、というのは「器の小さいヤツ」と思われやすいもの。


たとえ持って生まれ持った器の大きさは変えられなくても、その大きさをどう感じ取ってもらうかは、なんとかできます。


巷で囁かれる女性にモテるテクニック(←あやしいい?笑)に、同性の友人を褒めろ、というのがあります。


これは陰口の反対ですね。本人がいないところで、同性のその友人をサラリと褒めるわけです。


自分のことだけじゃなく、他人の長所ををしっかりみつけて、それに感謝する男。女性は男性の友情物語がけっこう好きですから、わざとらしくては逆効果になりますが、ふとした話の流れでさりげなくすれば効果が期待できそうですね。


そんな器用にできないよ、と思うならちょっとだけこう考えてみましょう。


★伝えるとは、なにも自分のことばかりではない。自分が言いたいことばかりではない。相手が知りたいことを提供するのだ。


他人への関心とサービス精神が、やがて自分に返ってくるのです。


もしも「自社だけでいい」という上司や会社なら、周囲へ分け与えようとはしないでしょう。


上司や同僚のミスを突付き、部下の手柄を横取りし、いつも疑心暗鬼でピリピリしてる。


そういう会社や店の雰囲気にお客さんは敏感です。言動や表情や文章ににじみ出てしまうからです。


競合他社の話題も提供するか。するなら真剣に力を入れているか。


この2点で、会社も人間も「知られて」しまいます。


自分だけを伝えれば、たしかに伝わります。ただしその内容は伝わらないほうがよいといえるようなものです。


このように、伝え方でひとつで予期せぬものが伝わってしまうことがあります。


この種の予期・予想は、しようと思えばできるものです。


9割の人は予期・予想できないのではなく、しようとしないだけ。


するためには、他人への関心と想像力が必要です。


予期・予想すれば、対処ができます。


伝えるとは? といつも考え続けることが道を開くのです。


★例えば温泉地の温泉手形。お風呂を広く提供することで、それぞれの宿の魅力を知ってもらうきっかけを提供する。自分の宿だけ、という考えのままでは温泉地が廃る。お互いの魅力を引き出し合い、伝え合うこと。それが客へのサービスとなる。


★業界内の話題を伝える。それが競合他社の競合商品であろうと、それぞれの違いを際立たせることで客に選択してもらえる。放っておいても客は比較検討する。ならばこちらからその材料を提供するのだ。これが次につながるプロの仕事。


★「自分のことしかしゃべらない」のがツマラナイ人の典型といわれる。ならば「自社のことしか伝えない」のが魅力無い会社といわれてもしょうがない。競合他社の話題も絡めれば業界が盛り上がり、自社の利にもなる。


★たとえ持って生まれ持った器の大きさは変えられなくても、その大きさをどう感じ取ってもらうかは、なんとかできる。



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posted by タカ at 13:04 | TrackBack(0) | 明快に伝える日本語力の磨き方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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