2010年03月28日

選択、タイミング、フットワークの軽さ

「わかりやすくするとは、無数の情報が漂う中から、それを必要としている人の役に立つよう選択してあげること。同じものを集めて並べるのではない」

インターネットが無かった時代には、例えばお気に入りのバンドのコンサートのチケットを購入するにも、まずは情報収集からはじめなければなりませんでした。

チラシや雑誌でコンサートの情報を探し、電話して尋ねる。ということをするのが当たり前でした。

コンサートに関する情報がひとつにまとまった媒体があれば便利。コンサートだけじゃなくて映画も。

そんな要望に応えたのが、コンサート情報や映画情報をまとめた雑誌「ぴあ」でした。

このように、インターネットの出現以前は、あるキーワードに関する情報を集めることがみんなの役に立ちました。

ところが現代は、集めた(集まった)情報の中から選択して提供してあげることがみんなの役に立ちます。

さて、インターネットをはじめとするあらゆる情報ツールを多くの人々が使うようになると、その情報の膨大な数に圧倒され「何を選んで提示するか」について、本末転倒なことをしてしまいがちになります。

例えば、選択した「A」にA1、A2、A3と付け足して提示するとしましょう。

「A」についての様々な情報に目を通せるという意味ではたいへんありがたい。

でもこれでは、一見すると「選択」して提供しているようでありながら、実際は同じようなものを並べているだけともいえます。

こうなるとユーザーは結局のところ「A」についてのA1、A2、A3に目を通して、自分にとって都合のいいものを選択しなければなりません。

いま、そしてこれからの最大のサービスは「選択してあげること」といってもいいでしょう。

ユーザーは自分で選択しているつもりでも、本当に何から何まで自分で選択する煩わしさからは開放されたいと願っています。

選んで提示してあげたつもりが、選ぶ煩わしさを味あわせる機会をわざわざ作っただけ、なんてことにもなります。

とはいえ、ユーザーに有用な情報は次から次にどんどん出てくるのだから、やはり「A」についてA1、A2、A3と付け足したくなる衝動に駆られるかもしれません。

では、どうしたらいいのか?

対処法はシンプルで、カンタンです。

程よいタイミングで「今はコレ」という「A」を提示すればいいのです。

雑誌や本という媒体では、関連する情報を集めて並べることに意味があり、それが求められました。

集められた情報の中から何を選び、どうするかは読者に委ねられていたのです。

インターネットの出現によりウェブサイトやブログやメールマガジンでは、集めた「A」の情報の中から「コレ!」という「A」を選択して、他の関連する「B」や「C」と比較や組み合わせをして、ひとつのコンテンツとして提供するようになりました。

「収集」 → 「組み合わせてコンテンツ作成・提示」

これが紙媒体だけの世界から、インターネット出現・普及までの、大まかな「ユーザーの要望に応えるカタチ」の流れです。

そしてこれからは特に「今まさにコレ!」をタイミングよく提示することが最大のサービスとなるのです。

「A」にA1、A2、A3を付け足すのではなく「今・旬」の「A1」を「A」に入れ換えればいい。

「A」は「今まさに」このひとつしかない、というぐらいの気持ちで「今まさにの『A』」を提示するのです。

ほかのA2、A3を切り捨てたわけではありません。時がくれば彼ら(?)が表舞台の「今まさに『A』」に躍り出ることもあります。

実際にはA4、A5、A6と続々と出てきますから、A2、A3といった初期グループのAが表舞台に出ることはほとんどありませんが……。

お笑い芸人だって、旬な若手芸人といえば「はんにゃ」ですが、ほかにもたくさんの若手芸人がいます。

時間が経てば、若手芸人のなかのほかのコンビが「旬な若手芸人」になることもあるでしょう。

若手芸人たちにとっても「今まさにコレ!」「旬はコレ!」と提示してくれないことには、いつの日か自分が選択されて「旬な若手芸人」になれる機会もなかなかないでしょう。

若手芸人も、お笑いファンも、選択された「今まさにコレ!」を望んでいるのです。

若手芸人をただ100名集めても番組は成立しにくいでしょう。旬な芸人を選び、その他の若手芸人たちと一緒に挑戦やゲームをしてもらうことで、お笑いファンや視聴者に喜んでもらえるのです。

結局のところネットを利用した情報サービスは「選択」と「タイミング」が重要なのです。

せっせと同じようなものを集めて提供するのは、ネット以前の時代に求められたサービスであって、現代、そしてこれからはますます「選択したものをタイミングよく提供するフットワークの軽さ」が求められるのです。

ですから「編集」と称して時間と手間をかけたからといって、それをユーザーが望むとはかぎりません。

むしろ「編集」がクライアントを納得させるための体裁や口実になってしまっては、その先のユーザーが求めるものとの距離がどんどん広がっていってしまうでしょう。

今後は特に「選択」と「タイミング」。それを可能にするフットワークの軽さを理解して活用する企業が生き残り、ますます強くなっていくでしょう。

インターネットの普及によって浮かびあってきたキーワードは「今まさに」です。

「ツイッター」の登場にみるように、「今まさに」がますます意味を持つようになったことを企業も個人も意識することがまずは必要なのです。

わかりやすくする。つまり選んで提示したつもりが、選ぶ煩わしさの機会をわざわざ作ってあげただけ、なんてことにならないよう気をつけましょう。


★わかりやすくするとは、無数の情報が漂う中から、それを必要としている人の役に立つよう選択してあげること。同じものを集めて並べるのではない。



posted by タカ at 23:31 | TrackBack(0) | 明快に伝える日本語力の磨き方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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