2010年03月17日

選択の勘違い

わかりやすくするとはどういうことでしょうか。

その答えのひとつは「選択してあげる」ことです。

無数の情報が漂う中から、読者の役に立つよう選択してあげるのです。

色鉛筆で例えてみましょう。

500色の色鉛筆セットがあるそうです。

色の名前にはこんなものもあります。


「羊飼いの角笛」

「ポンパドゥール婦人の笑顔」


どんな色なのか、さっぱりわかりません。

日常で使うのであれば、36色もあればじゅうぶんです。

それでも種類が多いぐらいです。

色に特別なこだわりがなければ、12色でも用が足りるでしょう。

さきほどの「羊飼いの角笛」「ポンパドゥール婦人の笑顔」も、ピンクといえばそれまでです。

ポンパドゥール婦人の笑顔の色の鉛筆を取って、と言う人は、羊飼いの角笛の色の鉛筆を取って、と言うかもしれませんが、そんな人はめったにいません。

一般的には「ピンクの色鉛筆を取って」で、用はじゅうぶんに足ります。

500色の色鉛筆があってもいいんです。でも、たいたいの人は500色すべては必要ありません。

ピンクなら、ピンクの色鉛筆が1本あれば、とりあえずはOKです。

微妙な色合いが違うピンク系の色鉛筆が必要な人は、それを探し出す労力を惜しみません。

ですから、一般的により多くの人にわかりやすく伝えようとするならば「ピンクならこれ!」という1本をズバリ提示してあげましょう。

無数の情報が行き交う現代では特に、選択する行為にたいへんな労力と時間が要ります。

その負担を少しでも軽くしてあげる。それがわかりやすくする、ということなのです。

ピンクっぽい色をいくつも集めて束にして渡すのではありません。

紙やネットといった媒体を問わず編集という作業は「選択」です。

ファッション雑誌の特集ページを作成するなら、無数にあるレギンスの中から選択して「最新流行レギンスはこれ!」と提示してみせるのです。

発売中のレギンスをすべて何十、何百と並べるのではありません。

いろいろな種類のレギンスのさまざまな違いといった詳細を知りたい人はほかの雑誌やネットでいくらでも調べます。

そこまでレギンスに注目しているわけではなけれど、ファッションのひとつとしていろいろな洋服の流行を知っておきたいという人には、選択してあげるのです。

それが編集であり、わかりやすくしてあげることでもあるのです。

ここ数年、百貨店が振るわないのも、このあたりと関係がありそうです。

物が不足していた時代を生きてきた人にとって「何でも揃う」は魅力でした。

しかし物が溢れる時代を生きてきた人にとって「何でも揃う」は当たり前であって、その先のサービスを求めます。

その先のサービスとは「選択」です。

セレクトショップなんかはその一例ですね。

大きな百貨店が売り上げ不振にあえぐのを見るまでもなく、時代の変化にともなう需要の変化を受け止めて、流れに沿っていかなければ、どんなに大きな船でも座礁します。

ほかにも、例えばニュースサイトでもこのあたりは顕著に表れていますね。

ニュースサイトはPCサイトやモバイルサイトなどいろいろありますが、ニュース記事の見せ方やトピックの編集方法をみれば、そのサイトが時代の変化と自社のサービスを利用してくれるユーザーのニーズをちゃんと理解しているかどうかの判断材料になります。

わかりやすくすること、一般的な「編集」といったことに関しては、誤解している人がけっこう見受けられるようですので、みなさんも「選択の勘違い」に注意しましょう。


★わかりやすくするとは、無数の情報が漂う中から、それを必要としている人の役に立つよう選択してあげること。同じようなものを集めて並べるのではない。



タグ:日本語 文章
posted by タカ at 15:39 | TrackBack(0) | 明快に伝える日本語力の磨き方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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