2009年10月07日

意外とやってるかもしれない落書き


トンネルの壁やシャッターにスプレーで落書きされているのをみたことがありますか?


落書きによく見られるひとつの傾向として、画数の多い漢字が多い、というのがあります。


そういった落書きには当て字が含まれていたり、たまに誤字もあったりしますが、大きな特徴は漢字だけで落書きされていることです。


カタカナやひらがなを使わずに、すべて画数の多い漢字を使ってズラッと並べて書くのです。


「山川県髑髏連合魔人愚連隊初代総長参上」


なんだかわからないけど、画数の多い漢字が並んでいるだけでカッコイイ! と感じるのは落書きした本人だけ。


これと似たようなことは、いたるところに見ることができます。


役人が作った原稿を政治家が読み上げる場合なんかもその例のひとつですね。


画数が多い漢字をなるべくたくさん使う。それがカッコいいとうのは、伝統(?)として受け継がれているのです。


いや、ウチの息子や娘は暴走族でもないし、官僚の言いなりの政治家にならせようともしていないし、そもそもちゃんと国語の勉強をさせているから大丈夫。


そんなふうに思っているお父さんお母さんをはじめ、実際にいま勉強をしている人まで、ぜひ考えていただきたいことがあります。


漢字を勉強させる(勉強する)ことが目的になっていませんか?


画数の多い難しい漢字を覚えて、正しく書けたからマル。正しく読めたからマル。正しい意味を答えられたからマル。で良しとしていませんか。


実は、ここに「ことばを学ぶ落とし穴」があります。


ことばに絶対はありません。


あるとすれば、時と場合によって最も適当だとおもわる意味や用法があるぐらいなものだと思ってください。


画数の多い難しい漢字を書いたり、読めたり、意味を答えたりといった学習は、ことばや漢字の存在を知り、時と場合によってそれらをわかりやすく伝えるために変換する作業を行うためのものだと認識しなければなりません。


たとえば「苛烈」を学習する目的は「苛烈」ということばの存在を知り、その意味を知るだけでなく、よりわかりやすくするためには他のどんなことばに置き換えられるかを知り、実際に変換できるよう訓練することです。


○×式の学習とその結果に一喜一憂(情勢の変化に伴って喜んだり心配したりすること)するといった「ことばを学ぶ落とし穴」に落ちないようにしましょう。


ことばのコレクションが趣味の人は、漢字を勉強することを目的としてもいいでしょう。


しかし、ことばを学ぶ目的は、ことばの存在と意味を知り、時と状況に合わせ、最もよく伝わる方法を考えてそれを形にすることだという人もいるはずです。


さて「苛烈」を学習するのは「苛烈」を使わないため、ともいえます。


あえて大げさにいえば「苛烈」をわざわざ使うのは、トンネルの壁やシャッターにスプレーで「山川県髑髏連合魔人愚連隊初代総長参上」と落書きするようなものです。


そんな落書きをカッコイイ! と感じるのは落書きした本人だけです。


では、今回の例文をみてみましょう。


<例文>

「管轄区域での苛烈な戦闘による自軍兵力の疲弊を危惧し、暫時敵軍の趨勢を警戒する所存です」


<解説>

漢字が多いですね。できるだけ画数の多い難しそうな漢字を使おうという書き手の思いがヒシヒシと伝わってきませんか?

では、例文のなかの難しそうな漢字をどんなことばに置き換えれば、わかりやすくなるでしょうか?

例文が伝えたい内容を損なうことなく、なるべく正確にわかりやすく伝えるにはどんなことばを使えばよいのか。

難しそうな漢字をみたときに、それに置き換わるわかりやすいことばが浮かんでくればOKです。


管轄    → 担当

苛烈    → はげしい

戦闘    → 戦い

兵力の疲弊 → 兵力の消耗

危惧    → 心配

暫時    → しばらくのあいだ

趨勢    → 動向

警戒    → 用心

所存    → 考え



<リライト例>

「担当区域でのはげしい戦いによる兵力の消耗を心配し、しばらくのあいだ敵軍の動向に用心する考えです」


「管轄」や「警戒」はそのままでもいいかもしれませんが、文全体としの漢字の難解度の釣り合いや、音(カンカツ、ケイカイ)の響きを考えると「担当(タントウ)」と「用心(ヨウジン)」にしたほうがいいと判断しました。

それから「自軍」を省きました。兵力の消耗を心配するのは自分の軍隊であるのは当然です。わかりきっていることを省略するのは日本語の特徴のひとつでもありますし、そうしたほうがスッキリしますから。


--------------------


新装版 日本語の作文技術
新装版 日本語の作文技術
講談社 2005-09-10
売り上げランキング : 19693

おすすめ平均 star
star「教師」と名のつく人の必読本
starわかりやすい文を書く教科書です。
starわかりやすい文章を書くための基本がシンプルにまとめられた一冊

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


読めそうで読めない間違いやすい漢字第2弾読めそうで読めない間違いやすい漢字第2弾

読めそうで読めない間違いやすい漢字 読めそうで読めない漢字の本―あなたに挑戦!正しく読めますか? (二見文庫) 読めないと恥ずかしい漢字1500 -日本人なら、これくらいは知らなくちゃ! 間違えると恥ずかしい日本語500 漢字でゼッタイ恥をかかない本―10日間で完璧マスター! (ムックの本)

by G-Tools



この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/129714402

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。