<例文>
「まっすぐ飛んで敵の標的になるな」
<解説>
第1次世界大戦時の戦闘機同士の空中戦を題材とした映画で、敵の対空警戒域を突破する任務を発令するシーンでのこと。
上官が戦闘機のパイロットたちに言います。
「まっすぐ飛んで敵の標的になるな」
上官が言いたいことの核となる部分は「敵の標的になるな」です。
では、敵の標的にならないためはどうしろと言いたいのでしょうか。以下から選んでください。
(1)まっすぐ飛べ
(2)まっすぐ飛ぶな
戦闘機で敵の対空警戒域を突破となれば、ちょっと考えれば(2)番が正解だと考えられます。
なぜなら、まっすぐ飛べばそれだけ飛行経路を予測しやすくなり、地上からの砲撃を受ける確率が高くなるからです。
では、山で遭難しかかっているA君の場合を想定してみましょう。
かろうじて救援隊本部と通じた無線。
「沢におりて遭難するな」ということばを聞き取れた直後、音信不通に。
登山経験がほとんどゼロのA君は「沢におりることで遭難を回避しろ」という意味にとるか「遭難するから沢におりるな」という意味にとるかで悩みます。
登山経験がほとんどゼロのA君には山の常識は通じません。
また、山の地形や天気や気温といったさまざまな要因から、その時点ではどのような行動をとるべきなのかは多少登山経験がある人物でも的確な指示を得なければ遭難の危険性が高まるでしょうから、A君の場合はなおさら判断材料が少なくて悩みます。
たった10文字の「沢におりて遭難するな」で、人を死なせてしまうこともあり得ます。
その一方で、たった6文字の「沢におりるな」や、たった5文字の「沢におりろ」で、人を救えることもあり得ます。
では、例文をリライトしてみましょう。
まず、真っ先にどうすべきかを具体的にを示します(「○○するな」「○○しろ」)。
次にどうすべきかの根拠や目的(○○にならないため)を示します。
<リライト例>
「まっすぐ飛ぶな。敵の標的になるな」
「ジグザグに飛べ。敵の標的になるな」
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