2009年09月04日

オードリー大ブレイクはわかりやすさが必要とされる今を象徴する


<人気お笑い芸人に学ぶ、わかりやすくする技術>


お笑い芸人コンビのオードリーをご存知でしょうか。


2008年12月21日のM-1グランプリ2008で準優勝(2位)に輝いた彼らは、その後一気にテレビにたくさん出演するようになり、人気お笑い芸人となりました。


その人気ぶりはすさまじく、M-1グランプリ2008で優勝したお笑い芸人コンビの「ノンスタイル」をはるかに凌ぐ勢いがあります。


しかしオードリーはM-1グランプリ2008以前は、一般的には全くと言っていいほど知られていませんでした。


オードリーが地上波のテレビ放送で初めてネタを披露したのは2008年1月1日の日本テレビ系のバラエティ番組でのことです。


オードリーの結成は2000年4月。


ということは、コンビを結成してから8年間、オードリーは地上波のテレビでネタを披露したことがなかったのです。


8年から9年間売れなかったオードリーが突然売れたのはなぜでしょう。


突然と書きましたが、それは視聴者側の印象から出た言葉です。


オードリーにとっては8年から9年の歴史があります。その歴史のなかで転機となった出来事があるそうです。


コンビ結成からしばらく、オードリーの漫才では若林がボケを、春日がツッコミを担当していました。


その当時の春日は自分のことを、明石家さんまぐらいツッコミも司会もできるお笑い芸人だと思っていたそうです。


春日は自分ではうまくツッコめているつもりでしたが、実際には間違いが多くて、どうもうまいかず、漫才は当然のようにウケません。


そしてコンビ結成6年目に転機が訪れます。


あるテレビのバラエティ番組の若手芸人を対象としたオーディションに参加したときのことです。


ネタを披露した後、若林だけが構成作家に呼び出され「これまでたくさんのお笑いコンビとそのネタを見てきたが、どう見ても春日はツッコミとしてはポンコツでまったく伸び代がない」と指摘されました。


そこで今度は、春日の間が悪かったり見当はずれだったりするツッコミに対して、若林が逆にツッコミをすることにしました。


こうして若林が命名するところの「ズレ漫才」と呼ばれる彼らの漫才スタイルが確立します。


漫才で話を進めようとする若林に対して、春日が間の悪いツッコミ(時間差ツッコミ)をしたり、話の内容や状況に合わないことを言たり、自信過剰な発言をしたりします。


その度に若林がツッコんで笑いを誘います。そんなことばかりしているので話はちっとも進みませんが、漫才の途中でコンビ愛を感じさせるようなやりとりも挟み込みます。


お笑いブームを支える主役は若い女性たちです。彼女らはたいてい男たちの友情物語が大好きです。


たいていの男性お笑い芸人のコンビは売れない時代があることを女性ファンたちは知っていますから、売れなくて苦労した時期を共に乗り切ってきたコンビ愛を匂わす「くだり」を挟み込むあたりは、観客の「共感」を誘うよくできた芸となっています。


そんなテクニックも持ったオードリーですが、なんといっても「ズレ漫才」に注目しましょう。


一見ツッコミのようにみえるものが実はボケであり、そのボケにあらためてツッコむ漫才は私たちの日常でも、いたるところにみてとれます。


本人はメチャメチャ仕事を仕切って「デキるビジネスマン」気取りなんだけど、周囲からはちょっと冷ややかな目でみられている。だけど「デキるビジネスマンの風を自分で扇いで作り出す彼」は会社役員の御曹司だからだれもツッコめない……。


本人はメチャメチャおしゃれな女性のつもりなんだけど、周囲からは「路地裏の孔雀オバちゃん」と呼ばれている。だけど彼女は地元の大地主の娘でローカル局でファッションコーナーを持っているのでだれもツッコめない……。


そんな彼ら彼女らに、もしもだれかが愛のあるツッコミをすれば、周囲からのひややか目が一気にあたたかい目に変わるかもしれません。


愛のある的確なツッコミこそ今もっとも必要とされているものなのです。


わかりにくさの可能性を秘めている文は、例えるならば自分のことを明石家さんまと同等の男だと思っていた春日です。


そのころのオードリーの漫才はちっともウケない。そして自信満々のツッコミが実は的外れであり、ツッコミとしてはポンコツだと指摘されてそれを自覚したとき、若林による正確なツッコミができるようになった。


これと同じように、ボケと自覚しないボケ、しかもあたかもツッコミであるかのように振舞っているボケに気づき、そこにツッコむことで、わかりやすい文にリライトすることができるのです。


さぁみなさんも若林の目線で、身の回りに「ツッコミのポンコツ春日」がいないか探してみましょう。


きっとたくさんの「ポンコツ春日」がみつかるはずです。


春日のポンコツなツッコミというボケをみつけて、ツッコんであげましょう。


それはまさに「わかりやすい文にするリライト」を行っているのと同じようなことなのです。


一般的な漫才は、ボケとツッコミがはじめから明確に分かれています。ボケがボケて、ツッコミがツッコむ。ここに生じる「ズレ」は漫才のなかでの「ズレ」です。


しかし、オードリーの漫才にはツッコミっぽいものが実はボケだという「ズレ」が生じます。


これは、漫才のなかでの「ボケ」であると同時に、その「ボケ」のさらに中に「ズレ」が含まれている意味を強調した意味で「ズレ漫才」といわれます。


いわば二重構造の「ズレ」を用いたオードリーの「ズレ漫才」がウケるのは、そこに現実が重なるからです。


現実にもありそうな、ボケに限りなく近いと感じるツッコミがたくさんあると多くの人が感じているからこそ、オードリーの「ズレ漫才」に多くの人たちが喝采をおくるのです。


「現実にもありそうな、ボケに限りなく近いと感じるツッコミ」の例としては、有名なものでは以下のようなものがあります。


<例文>

「ここではきものをぬいでください」



これでいいのだとばかりに、まるでこれがツッコミ(みんなが正しいと思う常識のラインに戻す役割を持つ)かのように振舞う例文を、みなさんもどこかで見たことがあるかもしれません。


もちろん、この例文は「ボケ」です。


ここで履物を脱ぐのか? それともここでは着物を脱ぐのか?


ここで脱ぐのは履物? それとも着物? どっちやねん!


とツッコミたくなる、あいまいな文だからです。


「現実にもありそうな、ボケに限りなく近いと感じるツッコミ」が溢れている現実を反映させたところに、オードリーの漫才の奥深さが垣間見れます。


そういった意味で、お笑いで身につくわかりやすい文を書く技術を語る上で、オードリーはまさにわかりやすさが必要とされている今を象徴するお笑い芸人コンビだといえるのです。


だからオードリーは大ブレイクしたのです。


8年から9年間売れなかったオードリーは、その期間に現実や時代を反映させる芸を身につけて、高く飛び立つ準備をしていのです。


時代を反映するとはつまり、時代に合致すること。


時代に合致したオードリー。だから彼らは大ブレイクしたのです。


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posted by タカ at 21:11 | TrackBack(0) | 明快に伝える日本語力の磨き方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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